それから一ヶ月後。

今日と明日は、遂に文化祭当日。
空を見上げれば晴天で、客足も望めそう。


……篠原君と初デートしたあの日から、莉由さんの存在がずっと気になっている。

自分の気持ちははっきり相手に伝えた方がいいことも、そんな自分になりたいと決意したことも、決して忘れた訳ではない。

でも、好きな人が絡んでくると少し話が変わってくる。
下手なことを言って、めんどくさいから別れようだなんて言われたらどうしようとか、〝友達〟が相手なら考えないことも、〝恋人〟が相手だとついつい考えてしまう。


今のところ、私がこんな風に悶々と思い悩んでいることは、篠原君には気付かれていないはずだ。

篠原君との距離感は、相変わらず変化はない。
縮まってはいないけれど、悪くなってもいない。
それならば、少なくとも今はこの距離感を保っていたいと思う……。



とにかく、今日は遂に文化祭本番なんだ!
思いっ切り楽しまなきゃ絶対、損!



私は売り子の係。
時間で交代制になっているので、午前中に当番をやったら午後は予定なし。
香か結先輩か女子バスケ部の子か……誰かと予定が合えば一緒に回りたいな。


そんなことを考えながら、タピオカを販売する屋台の準備をしていると、


「みーずほ」

と、後ろから松永君に声をかけられ、振り向く。



「何? 松永君」

「ふふふ」

何やら含み笑いの松永君。……何か企んでいそうな顔をしている。


そう言えば後ろ手に何か持っているのも気になる。