「映画、面白かったね」
「ああ」
一緒に観た映画は、外国の3Dアニメーションの吹き替え版。
こういう映画、男の子はあんまり興味ないかな?と心配だったけれど、篠原君の親戚の子がそういう類の映画が大好きらしく、篠原君も一緒に観せられているうちに好きになっていったらしい。
それにしても、親戚の子と一緒に遊んであげるだなんて、篠原君って結構面倒見がいいんだな。彼の意外な一面を知ることが出来て、つい嬉しくなる。
「映画館、もう出る?」
館内のロビーで、篠原君にそう尋ねられる。
「あ、せっかくだからパンフレット買っていっていい? 少し並んでるけど」
「ああ、いいよ。じゃあ俺も並ーー」
「梓!」
突然、篠原君の声を遮るかのように、どこからか聞こえてきた女の子の声が篠原君の名前を呼んだ。
篠原君と一緒に振り返ると、そこには私達と同い年くらいの可愛い女の子が立っていた。
「莉由」
篠原君がそう名前を呼ぶと、莉由と呼ばれたその女の子は、
「梓ーっ、久し振りー! こんな所で会うなんて偶然ー!」
と言って、篠原君にぴったりとくっついたのだった。
だ、誰?何でそんなに篠原君にくっついてるの?
「お、おい。そんなにくっつくなよ!」
「え〜? いいじゃん別に。それより、その子、誰?」
女の子が、私に視線を向けて首を傾げる。
「あ……初めまして。桜井みずほと言います」