その日の放課後。
部活が終わり、体育館の鍵を職員室に返し、玄関へと向かう。


「ごめんね、お待たせ」

玄関では、篠原君が私を待ってくれていた。


「いや。じゃあ行くか」

「うん」

まだどこかぎこちなく彼の隣に並び、ぎこちなく帰り道を歩いていく。



篠原君と付き合うことになってからも、私達の間に大きな変化はやっぱりない。

手もまだ繋げないし、家に帰ってからもメッセージのやり取りはほんの少しするくらい。


控えめな私達にとっては、そんな空気感の方がちょうどいいのだと思う。


だけど、恋人同士になってからは、放課後の部活がある日さこうして一緒に帰っている。


二人きりで下校なんて最初は周囲の目が気になったりもしたけれど、カップルで下校している人なんて他にもたくさんいる。
それに……そもそもあんな廊下で、しかも大きな声で『私は篠原君が好き』と宣言してしまった為に、私達が付き合い始めたことはほとんどの人が知っている。

だから恥ずかしくないという訳では勿論ないけれど、今更お付き合いをコソコソ隠す必要もない。



「そう言えば、文化祭楽しみだね」

ふと、思いついたことを口に出してみた。

文化祭は来月の第二土曜日と日曜日に行なわれる。

去年、まだ中学三年生だった頃、学校見学も兼ねてうちの高校の文化祭に香と二人で遊びに行った。