「と、友達って何よ!」

「そうよ! 私達は遠くから見てるだけなのに、友達とか調子乗ったこと言ったんじゃなーー」


「と、友達って言ったら友達なんですっ‼︎」


私が突然声を荒げたから、女の子達は皆、ビクッと身体を震わせた。

ここまで言ってしまったら、もう後戻りは出来ない。

だけど不思議と、後悔も恐怖もなかった。



「……マネージャーは、松永君に誘ってもらったから引き受けました。でも、男好きとか、チヤホヤされたいとか、そんな理由じゃないです。マネージャーになったら、女子バスケ部の人達とも友達になれるかもって思いました。私、女の子の友達が欲しかったんです」


不思議なことに、覚悟を決めたら、言葉がするすると出てくる。

唇の震えもなくなっていた。
彼女達の目を見ることも出来ている。


だから、肝心なこともちゃんと言おう。




「……わっ、私は、男子が好きなんじゃなくて、篠原君のことが好きなんですっ。だから、男好きとかもう、言わないでくださいっ!」



はっきりと……そう伝えた。
ちょっと、はっきりと伝えすぎたかもしれない。
だけど、きっと間違ってない……。



しばらく、シンとした空気が流れる。


間もなくして、黒髪の子が口を開く。



「……何よ。私達のことばっかり悪者みたいにするんじゃないわよ!」


そう言って、右手を私に向かって大きく振りかざす。
殴られるーーと思って、反射的に目をギュッと瞑るも、恐れていた衝撃は襲ってこなかった。

恐る恐る目を開けると、それまで黙っていた松永君が黒髪の子の右手を正面から掴んでいた。