皆の前ではっきりとそう言い切った篠原君。

そんなこと言ってしまったら、私はこれ以上の嫌がらせに遭うかもしれないじゃない……とは思わなかった。

寧ろ、その言葉が嬉しかった。


そうだよ。


いつまでも誤解されるのは、私が自分の気持ちをしっかりと口にしないから。



……あの時だってそう。



〝朝日君〟にいじめられていた私は、彼を怖がって泣くばかりで、自分の言葉で反論も抵抗もしなかった。

もし私が、あの時自分の言葉で彼と向き合っていたら、彼の私への本当の気持ちにもっと早く気付けていたかもしれない。


転校間際に、ラブレターを渡してくれた〝朝日君〟。
彼はあの時、私から返事がもらえないのを分かって気持ちを伝えてくれた。
きっと、傷付いていただろう。


……それでも、何年も経った今もこうして、彼は私に〝好き〟と言ってくれた。



もう逃げたくない。


逃げたらまた傷付けてしまう。


私を守ってくれる大切な人と、そしてーー




自分自身のことも。





「……わ、私は、男好きなんかじゃ、ないです」


私は震える唇を開き、ゆっくりと言葉を発する。

震えたっていい。ちゃんと自分の気持ちを口にするんだ。



「私は小学生の頃、同じクラスの男の子から意地悪ばかりされてて、男子のことは今でも苦手です。そんな私に、篠原君と松永君は話しかけてくれて、友達になったんです」