不意にそう問いかけられ、「あっ、うん。大丈夫」と返事した。
ほとんど反射的な返事ではあったけれど、季節的にもそこまで寒くはない。もう一枚上着があれば有り難いけれど。


「そっか。まあ、これ着ておけ」

「えっ⁉︎」

彼は、自分が着ていた羽織りジャージを私に投げるように渡してきた。
羽織りジャージの下にはティーシャツを着用しているけれど、それだけでは寒いはずだ。


「わ、私は大丈夫だよ。篠原君が風邪ひいちゃうよ」

「俺は全然平気だから」

「で、でも」

「女子は身体冷やすな、って小学生の時の担任が言ってただろ」

「言ってたっけ?」

「言ってた。いいから着てろ」


はっきりとした口調でそう言われたため、お返しするのもかえって申し訳ない気がして、そのまま受け取ることにした。
たった今まで着られていたジャージは、彼の体温がまだ残っていて温かい。
何より……篠原君と体温を分け合っているみたいで、ドキドキした。


と、そんな呑気なことを考えていると。


「っくしゅ」

篠原君がくしゃみをしてしまった。やっぱり、半袖一枚じゃ寒いよね……!


「篠原君、ごめん! やっぱり返すよ!」

「いいって」

「くしゃみしてるじゃない。寒いんでしょ?」

「……顔は熱いから平気」

「そう顔は……って、え?」


顔だけ熱いってどういうこと……と思い、彼の顔を覗き込んでみると、耳まで真っ赤に染まっていた。