一緒に歩いたのは、本屋から駅までのほんの数分。

特に大した会話もしていない。お互いにお喋りなタイプじゃないし、明日から新学期だねとか、二学期も部活頑張ろうとか、そんな差し障りのない会話をしただけだ。


……それでも、彼が隣を歩いているだけで胸がドキドキしてしまった。


彼も同じ気持ちだったらいいなとか、そんなことも考えてしまった。



「じゃあな。また明日」

駅まで到着し、彼にそう言われる。


「うん。また明日」

もう少し一緒にいたい気もしたけれど、引き止めたところで上手く話せる自信もなかった。
あえてあっさり別れようと、私も彼にそう伝えたその時。



「みずほ?」


後ろから誰かに名前を呼ばれる。

聞き覚えのあるその声にハッとして振り向くと、そこにいたのはやはり松永君だった。


「松永君」

「……何で二人一緒にいるの?」

「え? あ……」


篠原君とは、さっき偶然会って、少しの距離を一緒に歩いていただけだ。

でも、毎日デートのお誘いの電話をしてきていた松永君からしたら、変な誤解をしたかもしれない。
無理に言い訳をする必要はないとは思ったけれど、誤解されるのも嫌だ。


「さっき本屋でバッタリ会って」

篠原君がそう言ってくれた。
しかし松永君は、


「……ふーん。そう」


と、いまいち納得のいかなそうな顔をしている。