勿論、お誘いは全て断っている。
香が一緒とかならば会ったかもしれないけれど、先日の一件以来、香は松永君に一切手は貸さないと誓っている。


今日も午前中に彼からいつものように電話が掛かってきた。
そした私の方もいつものように、デートのお誘いはしっかりと断った。


明日誘われても、明後日誘われても、いつ誘われても断ると思う、と。彼には申し訳ないと思いながらも、思わせぶりな態度を取らない為に、はっきりとそう伝えた。


彼は「うん。分かってる」と答えてきた。
分かってる、と言う割にはその声はどこか弾んでいて、もしかしたら電話を掛けてくること自体が彼の目的なのかもしれない。
それならいっそ電話に出ない方がいいのだろうかとも思ったけれど、無視するのもどうなのだろうとか色々考えてしまった。


そんな日々が数日続き……今日は遂に、夏休み最終日だ。

部活もなく、課題も終わっている。
そして、ここ数日は松永君からの電話もない。予定があったのかもしれないし、あと数日すれば学校で会えるからと思って連絡してこないのかもしれない。


「そうだ、本屋に行こう」

先週発売した、読みたかった雑誌をまだ買っていなかったことにふと気付き、何となく横たわっていたベッドから上半身を起こした。

部屋に置いてある全身鏡で自分の姿をチェック。
服は完全に部屋着だけれど、近所の小さな本屋に行くだけだし問題ないだろう。
ちょっとだけボサついていた髪を軽くとかし、お財布と携帯だけ持って私は家を出た。