夏祭りの日。バイクに乗るのを考えると、パンツスタイルの方がいいよな…ということで、安定のショーパンスタイル。
翔の友達の家までバイクで行き、待ち合わせの最寄り駅まで歩く。
改札をくぐった貴哉くんが見える。
「おーい」
特に聞こえるようにではなく声を上げて、高めに手を挙げて振ってみた。
こちらに気付いた貴哉くんは、ニパッと笑顔を浮かべてこっちに駆け寄ってきた。
「よく気付いたね、こんな小さいの」
「僕、飛鳥ちゃんのこと見つける天才だから」
「こないだの水族館の時に身に付けた?」
「いや、この3ヶ月くらいで身に付けてきた」
いらん能力だな、そりゃ。
「あ、こっちが兄の翔」
「どもー」
翔の軽い挨拶で、さほど身長差の無い2人がまともに目を合わせる。
貴哉くんは…ん?貴哉くん?何でそんなポカンとしてるの?
何なら少し恥ずかしそうだ。
「貴哉くん…あのさ、翔連れて行くの言ったと思うんだけど…」
「え?あ、いや、そういうことじゃなくて…!」
何焦ってるんだ貴哉くんは?
「何?俺に一目惚れしちゃった?」
「そんなわけ!…ないです」
「今のマジな否定だったよ?」
見てる分には面白いな、これ。
「いや…だって、なんか…こないだすれ違ったと思うんですけど…」
「マンションの近くでな?」
貴哉くんは2度頷いた。
本当に貴哉くんだったんか、翔が見たの!