花火が始まる。綺麗だなぁ…。
ただ、ひっかかっていることがあります。

ほら俺さ、隣にいる女の子に片想いしてるわけですよ。でも、だからと言って今告白しようなんて微塵も思ってないからさ、なーんも進展しないんですよ。

だから、花火見てる時の場面としては、

綿飴食べながら見てます、ちゃんちゃんっ!

…しか無いんだよ。

というわけで、花火が終わる。
何万発とかいう話で、フィナーレの頃には8時を過ぎていた。


「あー…綺麗だったねぇ、凄かったねぇ」

「うん。初めてこんな間近で見たよ」

「おー!そう?良かった、一緒に来られて」


飛鳥ちゃんは優しく微笑んだ。


「じゃ、そろそろ帰ろっか」

「だね」

「うちらはバイクだから、貴哉くんのこと駅まで見送ってから帰る」

「え、あ…来てくれるの?」


彼女は頷いた。


「来年は貴哉くんの地元のお祭りが良いな」

「え?」


もう来年のデート決まっちゃいます?

いや、飛鳥ちゃんからしたらデートのつもりは無いんでしょうけど。


「貴哉くんの浴衣姿!もしくは、甚平姿!見たいです!!」

「…はあ」

「ちょっと待って!貴哉くんそんな反応する子だったっけ?!」

「俺なんか、飛鳥ちゃんの浴衣姿も見られないのに?」

「…あ、そこですか」


圧倒的にそこですけど。そこ、しかないんですけど。