私は射的の景品に目を向けた。

取らせる気皆無な大きいゲーム機の箱なんかもあるな。
生憎あれは、翔が買って来て家にあるんで、用はないのだが。


「あっ…」


ふと目に入ったのは、赤ずきんちゃんと狼をデフォルメしたぬいぐるみのストラップだ。

普通に買ったら1500円~2000円って所か…。
誰かが掠ったのか、向きが少しズレているように見える。
割と人気なんだな、多分。


「赤ずきんと狼のストラップ取ってほしいな」


あえて可愛い感じで言ってみた。

だけど多分、2人は気付いてない!悲しい!


「了解っ」


彼は軽い調子でそう言って、挑戦することになった。
…てか、しかも貴哉くんの自腹ですか。

彼は、いつになく真面目な顔で銃を構えた。
肩幅に足を開いて、体はこちらに向けていて顔だけ標的に向ける。右利きのはずなのに、何故か左手だけの片手で。

ま…待って?私に何故かカッコイイ言われたいがためにやってるだけだったはず。
どうしてそんなガチモードになってるの?


ついでに、屋台のおじさんも若干困惑してるらしく、貴哉くんのことをガン見してる。どうしてこの人、こんなにガチなんや?って感じの目だ。

フゥッと息をついて、肩の力を抜いた。
…いや、だから何故に?ねえ。そんなガチでやらんでいいんですよー、貴哉さん。

だけど、次の瞬間…私も翔も、ついでに屋台のおじさんと隣で挑戦してた小学生男子まで、息を呑むことになる。