はっとして、私はさっきまで彼がいた方に首を向ける。

 しかしそこには、もう誰の姿もなかった。彼も家族と一緒に帰ってしまったのだろう。

 本当にもう友達になった気でいたから、8年後の約束とは別に、近いうちに遊ぶ気満々だった。

 だけど、彼のことは名前も学校も分からない。

 ーーあれ。

 もしかするとこれってもう、会えないんじゃない?


「どうしんだ、紗良?」


 家への帰り道に、そんなことを思い立って暗い顔をしていた私に向かって、心配そうにパパが言った。

  泣きそうになっていた私だったが、手に握りしめていた黒猫のキーホルダーの存在を思い出し、それを眺める。

 ――今日友達になった証だ。

 ――俺も絶対に来るよ。

 ――もう泣くな。

 落ち着いた笑顔で、私に優しくそう言う彼の姿が、幾重にも重なって私の頭の中を駆け巡ってきた。

 そうだ。彼と私は固く約束したんだ。

 絶対にまた流れ星を一緒に見るって。ふたりでお願い事をするって。


「ううん。なんでもないよ、パパ」