ーー仕方ないなあ。何泣いてんだよ。

 泣きじゃくる私を、ヨシヨシと慰めてくれるような、大人っぽい言い方。

 自分より背の小さな男の子に、私は包容力を感じたのだった。


「ほら、これあげるから。もう泣くなよ」

「え……?」


 なんだろう、と思った私は涙をごしごしと拭って、彼が私に差し出したものを凝視する。

 それは、彼がリュックサックにつけていた黒猫のキーホルダーだった。

 伸びるように寝転んだポーズをしている、かわいらしい猫だ。


「これ、さっき買ってもらったお菓子についてたおまけなんだ。あげるよ」

「知ってる! これ流行ってるよね! でも、どうして私にくれるの?」


首を傾げて尋ねると、彼は少しだけ頬を赤らめて、言いづらそうに言った。


「泣いてるより、笑ってる方が……いかなって……」

「え?」


小さい声で言ったので、よく聞き取れなくて聞き返してしまう。

ーー泣いてるより、笑ってる方がかわいいかなって。

実は、そう聞こえたような気がしたんだけど。