彼の方は、何度か見えたようだったので、運が悪いったらありゃしない。


「紗良―! 帰るよー!」


 粘っていた時に、少し離れたところからママが私を呼ぶ声が聞こえてきた。

 声のした方を向くと「あら、お友達?」とママが私たちふたりを見て言った。

 え、もう帰る時間? だってまだ、一度も流れ星見れていないのに。


「ご、ごめんママ。もうちょっとだけ待ってね」

「仕方ないわね、ちょっとだけよ。もう遅いし、流れ星の時間も終わりかけなんだからね」


 流れ星の時間が終わりかけ……?

 ママの言葉に驚きながら、辺りを見渡すと、大勢いたはずの人はいつの間にかまばらになっていた。


「確か、今日のねこ座流星群の極大時間は午後八時から九時……」

「え? どういうこと?」


 突然難しいことを気まずそうに言う男の子に、私は眉をひそめる。


「流れ星がよく見えるのは、今日の夜九時までだったんだ。もう九時を過ぎてるから、あんまり見えなくなっちゃったってこと」