連れて来られたのは、周りに何もない、丘の真ん中だった。

 暗い夜空が、視界のほとんどを占領する。


「見えるかなあ! 流れ星」

「どうだろ。ちょっと空が曇ってるね」


 はしゃぐ私に、彼は淡々という。

 確かに空は灰色の雲に八割がた覆われていて、ところどころ星が瞬いているのがたまに見える状況だった。

 私たちは手を繋ぎあったまま、丘の上に立っていた。

 彼の手のひらの温かさが心地よかった。ずっと握っていたいと、流れ星を捜しながらぼんやりと私は思った。


「あ! あった!」


 しばらくしてから、彼が空を指さしながら言った。

 「え! どこ⁉」と、彼が示した方向を見るけれど、流星は見つからない。


「私、見えなかった……」

「流れ星は一瞬だからね。でも今日はたくさん流れるんだろ? きっとまた見れるよ」

「うん」


 落胆する私を慰めるように彼が言う。

 だから気を取り直して、私は天空に目を凝らした。

 だけどその後も、一向に私は流星を見ることができなかった。