「だめだよ、そのままにしておいちゃ。ばい菌入っちゃうから」


 意外なことを言われて、私は虚を突かれた。


「ばい菌……? 入るとどうなるの?」

「化膿して怪我がひどくなっちゃうかもしれない。病院で診てもらうことになるかも」

「えっ! 病院……」


 私は病院が大っ嫌いだった。

 かかりつけの小児科の先生は、いつも不機嫌そうな顔をして、お母さんに偉そうに指図をするからだ。

 小さい子が診察が怖くて泣いていても、「親がちゃんと面倒見てくれないと困りますねえ」と嫌味を言う。

 先生の顔と言動が怖くて泣いているというのに。

 だから病院に行くことはできるだけ避けたいのだった。


「どうしたらいいの……?」

「うん、じゃあちょっとこっちに来て」


 そう言うと男の子は、私の手を握って誘導するかのようにすたすたと歩き出した。

 彼の手は私より小さかったけれど、がしっと優しく握る力は、妙に頼もしく感じた。

 彼に連れられてきたのは、公園に設置されている水道だった。