私の手の中にあった額帯鏡を認めると、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。

 ちょっとクールそうな印象だったけど、こんな風にかわいく笑えるんだなあ。

 なんだかほっこりした気分になった。

 彼は額帯鏡を大事そうにリュックの中へと閉まった。そして、私の方を見てはっとしたような顔をした。


「あれ、膝からいっぱい血が出てるよ!」

「え!」


 彼に言われて、自分の膝小僧に視線を合わせる。

 さっき転んですりむいたところだ。

 ちょっと痛いなあと思ってたけどたいしたことが無かったので気にしていなかったが、血が滲んで脛の方へと垂れていた。


「あー、さっき転んじゃったんだ。こんなに血が出てるって気づかなかった」

「そうだったんだ。ごめんね、俺の落とし物を捜すために怪我させちゃって」

「ううん! たいしたことないから大丈夫だよ! こんなの、放っておけば治るから!」


 責任を感じたようで、シュンとした様子で彼が言ったから、私は大きく首を横に振った。

 本当にたいした傷じゃない。

 これくらいの怪我、外で遊んだらしょっちゅうする。

 ――と、思った私だったが。