彼が持っている猫は寝転んでいて、私が持っている猫はお座りをしているから、ポーズが違う物だったけれど。

 それにしてもこんな暗い中で大事な物を落としちゃったなんて、困っているに違いない。


「大変だね! 私も一緒に捜すよ」

「え、なんで……?」


 私の提案に、男の子は怪訝そうな顔をした。


「だって、大事な物なんでしょ? 私だって誕生日にもらったお姫様のコンパクト失くしたら、必死に捜すもん!」

「……そっか。ありがとう」


 彼は落ち着いた声でそう言った。

 いつも教室で下品なことを言って騒いでいるクラスメイトの男子とは、ちょっと違うように思えた。

 ――心臓が変な動きをした気がした。

 公園まで歩いてきたから、疲れたのかな?


「それで、君は何を捜しているの?」

「額帯鏡だよ」

「がくたいきょー……?」


 生まれて初めて聞いた単語だったので、私は首を傾げる。


「お医者さんがよく頭に付けているやつだよ。丸くて真ん中に穴が開いてる、銀色の。分かるかな?」