「あの日紗良と別れてすぐ、名前を聞いておこうと思って、この場所に戻ったんだ。だけど紗良はもういなかった。別れてから一分も経たないうちに戻ったけど、いなかったんだ。その後結構探したけど、見つからなかった」

「え……?」


 あの時のことを思い出してみる私。

 そういえば、早く帰ろうとするお母さんとお父さんに連れられて、すぐに私は公園を出てしまった。

 私も名前を聞き忘れたことに気づき、帰り道の途中で振り返ったけれど光雅くんの姿はなかった。

 暗くてよく見えなかったのか、あるいは違うところを見ていたのか。

 今となっては分からないけれど、私と光雅くんはどうやらすれ違ってしまったらしい。


「あの時星の下で出会った紗良が、優しくて、信じられないくらいかわいくて。思い出すたびに、幻想的な記憶になっていって。俺は次第に、あの時のことはひょっとしたら夢だったんじゃないかって思うようになってしまったんだ。捜しても決して見つからなかった、星の降る夜に俺の前に突然現れた紗良は、俺が見た夢の中での、最高の出来事だったんじゃないかって」

「夢……」