良悟くんは柔らかい口調で、ゆっくりと言った。

　その柔和な声音は、私を受け止めてくれるような、包み込んでくれるような、そんな包容力すら感じられた。

　確かに、良悟くんと一緒にいるのは気が楽だった。

　彼はなんでもそつなくこなしてしまう光雅くんとは違って、私と同じように苦手なことがある。

　良悟くんには、光雅くんに対するような劣等感を抱くことはないかもしれない。

　――だけど。


「ごめん。やっぱりまだ、ずっと好きだった光雅くんへの気持ちは、どうしても消せない。消さなきゃいけないってわかってはいる……。こんな状態だから、今は他の誰かと付き合う難んて、到底考えられない」


　申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、私は言った。

　ここであっさりと良悟くんを好きになれたら、どんなに楽なのだろう。

　どうして自分の気持ちなのに、思い通りにならないのだろう。


「ですよねー。まあ、分かってたっす」


　良悟くんは両手の平を水平に上げて、おちゃらけた口調で言った。

　その言い方があまりにもあっさりしていて、なんだかおかしくなった私は小さく笑ってしまった。