私が彼の足枷になっていることを紛れもない事実だけど、きっと彼はそれに気づこうとしない。

 優しすぎて、そんなこと思いつきもしないんじゃないかと思う。

 だからやっぱり、言っちゃだめなんだ。

 私の真意を光雅くんに伝えたら、ますますこじれてしまう気がする。


「俺になら、そんな風に悩まなくてもいいのに」


 良悟くんが眼前に居るというのに、私は思わず考え込んでしまっていた。

 しかし彼にそう言われて、はっとする。

 改めて良悟くんに視線を合わせる。

 気まぐれな猫を思わせる彼の微笑みは、どこかいつもより穏やかに見えた。


「俺は残念ながら、光雅みたいに頭もよくねーしちゃらんぽらんだし。だけどだからこそ、光雅に引け目を感じてる紗良ちゃんと、同じ目線に立てると思う」

「同じ、目線……?」

「そうだよ。悪かったテストの点で一緒に笑い合ったり、補習でお互いが分からないところを協力して頑張ったりできる。周りが釣り合わないって言うことだって、きっとないよ」