「俺もそこ行きたかったんだけど部活が忙しくてなかなか暇がなくてさー。だけど、今日ちょうどサッカー部もテニス部も休みで。だから三人で一緒に行かない?」

「え……」


 良悟くんの提案に、口ごもってしまう。

 おいしそうなケーキはとても魅力的に思えたが、素直に味わえるような余裕は無いような気がして。

 すると、私がためらっている様子を見た芽衣が、ちょっと遠慮がちにこう言った。


「なんかさあ、最近紗良元気ないように見えて。いつもどこか上の空っていうか……。だから、ケーキでも食べたら少しは気分が上がるんじゃないかなあって思って!」

「芽衣……」


 表面上、いつも通り接していたつもりだったけれど、芽衣には見抜かれていたらしい。

 大切な友達に、心配をかけてしまっている。

 そのことが、私をひどく申し訳ない気持ちにさせた。

 ――そうだ。

 光雅くんへの想いはどうしても消えてくれないけれど、ずっとこのままくよくよしているわけにはいかない。

 すぐには無理かもしれないけど、いつか彼のことは吹っ切らなければならないのだ。