慌てた様子でそんな会話をしたふたりは、私たちに背を向けてそそくさと駆け出した。

 そしてそのまま、体育館から出ていってしまった。

 ーー光雅くん?

 ふたりの話を聞いて、私のことをかばってくれたの? 

 嬉しい気持ちになり、光雅くんをじっと見てしまった。

 すると彼は照れたように小さく笑った。


「さ、ボールは全部集めたよ。さっさと体育倉庫に置きに行こう。次の授業、始まっちゃう」


 何事も無かったかのように言う。彼らしいなあと思った。

 庇ったことをこれ見よがしにアピールせず、素知らぬ顔で自然にしているところが。


「うんっ……」


 ーーありがとう、光雅くん。

 心の中でこっそりとそうつけ加えて、私は光雅くんと一緒にボールかごを体育倉庫の中まで運んだ。


「確かバレーボールのかご置き場は、この辺だったよな」

「そうだね」


 バレーボールかごを元々あった位置に戻した私たち。


「光雅くん、ありがとう。手伝ってくれて」