お店の前に出て、神様はふうっと息を吐く。
白狐たちは何も言わず、大人しく着いてきていた。


「さて、あそこに行くか」


落ち着いた表情で、今度は離れて歩き出す。


当たり前のことなのに、今まで暖かく握られていたものが無くなって、急に手が寂しく感じた。


大事なプリントを忘れてしまった日みたい。


そう思い込んで、自分の感情に蓋をする。
気付かなければ、これは名前のないただの感情。
だから、見て見ぬふりを貫いた。



神様の後ろに並び、見えてきたのは商店街の終わり。

広い公園のようになっているけれど、たくさんのベンチやテーブルが置いてあって、人型神様がお喋りをしていた。


「ここは頂上の休憩所だ。ほら、あそこに神社があるだろう? そこで参拝してる奴らは皆人間だ」


神様の休憩所の隣には、確かに神社らしき小さな鳥居と祠があって、頂上にたどり着いた人がちらほら参拝していた。