女の子は私の顔を見ると、
「とーたん、お客さん!」
と、中に向かって声をかけた。

と、とーたん!?

“父さん”もしくは“父ちゃん”って呼んだつもりだろうか…?

私の聞き間違いじゃなかったら、この子は確かにそう言ったはずだ。

そう思っていたら、星川くんが顔を出した。

「ど、どうも…」

私は会釈をすると、カバンから星川くんのスマートフォンを取り出した。

「ありがとうございます、助かりました」

星川くんは私の手からスマートフォンを受け取った。

目的も果たしたし、ここで立ち去ろうとした私だったけれど、家の中から焦げ臭い匂いがしていることに気づいた。

「星川くん、何か焦げ臭い匂いがするんだけど…」

もしかしたら料理の最中だったかも知れないと思って声をかけたら、
「それが、先ほどカレーを焦がしてしまいまして…」

星川くんは言いにくそうに言った。