時計が5時を回った時、
「お先に失礼します」

星川くんは腰をあげると、すぐにオフィスから立ち去った。

彼がいなくなったのを確認すると、
「最近、早く帰るようになりましたね」

辻本ちゃんが話しかけてきた。

「そう言えばそうだね」

年が明けた辺りだろうか?

星川くんは定時になると、すぐに帰るようになった。

「彼女でもできたんですかね?」

そう声をかけてきた辻本ちゃんに、
「星川くんに彼女って、どんな彼女なんだろうね」

私は答えた。

あの無愛想に恋をする物好きな女っているんだな。

そう思いながら、私は計算間違いを直した書類を手に取ってデスクから腰をあげた。

星川くんのデスクに向かうと、そのうえにスマートフォンが置いてあることに気づいた。

珍しい、忘れ物をしてる。