(蒼月視点)
ガラララッ
お、誰か来た──
「蒼月ぃー飯は?食わねぇの?」
誰かと思えば琥牙である。
迎えに来てくれるとか優しいな。
でも俺以外のやつにはだめだよ?
「あ、もうそんな時間か。食べるよ?」
頭では馬鹿なこと考えながらも言葉を返す。
「何でずっと保健室にいたんだ?もしかして本当に体調悪かったのか?」
違うよ。
ちょっと妬いちゃってイライラしてただけ。
心配してる顔も可愛いな。
琥牙は。
「ん?違う違う。大丈夫だから心配しないで」
「本当か?お前、無理すんじゃねえぞ?」
優しい。
あぁ、ちょっと背低いから覗き込んでくる時の上目遣い。
顔は紛れも無く男だけど、可愛い。
可愛い過ぎて俺、死ぬかもしれない。
無理しなくていいの?
じゃあ襲ってもいい?
「大丈夫だって。購買行く?」
「あ、先に買ってきたぞ。お前のも。これで良かったか?」
そう言ってビニール袋を渡してくる。
ツナパンにウインナーヘルンといちごミルク。
いつも俺が食べてるものだ。
覚えてくれてるなんて嬉しすぎ。
本当死ぬ。
襲いたい。
「ありがと。俺の好きなのばっかり」
いつも通り脳内で悶絶しまくる。
俺、ポーカーフェイスは自分でも凄いと思う。
頭の中がいくらヤバくても顔は何時でも親友の顔を保てる。
嫌われて傍に居れないとか死んだも同然。
その為ならポーカーフェイスとか楽なものだ。
琥牙、
何をしてでも絶対に離さないから俺。
「お前、何時もそれだろ?流石に覚えてる」
「そう?ま、いいや。誰も居ないしここで食べよ?」
「そうだな。移動するのも面倒だしな」
俺が座ってるベッドの向かいに椅子を置いて琥牙が座る。
いつもみたいに横に並んで座るのも良いけど向かい合って座るのも良いな。
琥牙の顔とか体とかを見やすい。
今日はメロンパンに焼きそばパンにあんぱんとコーヒー牛乳。
琥牙は必ず昼にメロンパンを食べる。メロンパンが好きらしい。
「いただきマース」
棒読みでも毎日欠かさず頂きますを言う。
律儀だなぁと毎回思う。
琥牙にならって俺も食べ始める。
琥牙を眺めながら食べる飯は最高に美味い。学校に行けば毎日見れる。
なんて幸せなんだろう。
もぅ明日死んでもいい。
嘘。付き合えるまで、いや琥牙が死ぬまで死ねない。
あ、看取りたいけど看取られるのも良いかもしれないな。
「そう言やお前、保健室で何してたんだ?
まさかずっと寝てた訳じゃないよな?」
痛い所を突いてくる。
なんて言い訳しよう。
言えないもんな。
──────してたなんて。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ガラッ
「おはよーみのりちゃん。ベッド借りる」
ボフッ
「朝から何やってんのよ。授業は?可愛い可愛い彼氏くんは?」
「……琥牙は彼氏じゃない。疲れたから寝る」
「何?喧嘩でもしたの?」
「何でちょっと嬉しそうなの」
「喧嘩はしてない」
「いや当たり前でしょ?毎日の様に惚気けられる私の身にもなってくれない?あと授業は?」
「みのりちゃんも彼女の惚気け話するじゃん?センセーなのに良いの?」
「私は先生は先生でも養護教諭だから。それと授業は?無視するんじゃないの」
「理由になって無くない?授業はいい。それより聞いて」
「私も暇じゃない」
「生徒のココロを癒すのも養護教諭サマのオシゴトだと思いマス」
「思っても無いこと言ってんじゃないわよ。まぁ聞いてあげるわよ」
「わぁーい」
「棒読み止めて」
「それでさぁ朝から琥牙が可愛いんだよ。そこまでは良かったけど────」