「あ、おはようございますっ!」
「琥牙さん、おはようございます!」
朝、登校していると大勢の奴等が俺に挨拶してくる。
俺は近嵐琥牙。
いわゆる不良校の番長とか言うやつだ。
なりたかった訳ではないが、気付けば周りがそうなっていた。
ま、自分が一番強いという自負もあったし、こいつらの上に立つのも悪くなかった。
そのまま他の奴らの声を聞き流しながら教室まで行く。
ガラララッ
扉を開け教室に入っても挨拶の声は続いたが気にしない。真っ直ぐ自分の席へ行く。
「おはよう琥牙。今日もモテるねぇ」
朝からこんな皮肉を言うのは、と言うか学校で俺を呼び捨てにするのは蒼月ぐらいだ。
俺のツレで右腕的存在、小学校の頃からの友達でもある曽我部蒼月。
喧嘩も強い、勉強もできる、
イケメンで性格も良い。
ちっさい頃からよぉーくモテてる奴だ。
一方俺は、喧嘩は強いが、勉強はダメ。性格も……
って不良の鏡だな。当然モテない。
「うるせぇ。男にモテても嬉しくねぇよ」
「ふっっっ だよねぇ 」
「笑うな。それにお前の方がモテるだろ」
「…………」
「…なんか言ったか?」
「いや? それより先生が白紙でいいから出してくれって」
あーなんかあったな? 何のプリントだっけ?出さなくても良くね?
「白紙でも出してくれなきゃ進級させれないってさ」
「進級? 気ぃはやくね?まだ夏だぞ 」
「詳しくは知らない。もうすぐ冬だけどね」
朝からだるい。
とりあえずプリントのことは忘れよう。
鞄だけ置いて、教室を出る。
当然蒼月もついて来る。
「上、行くんだろ?」
ほんとコイツよく俺の考えてる事がよく分かるな。
蒼月の言う通り屋上に出る。
全く、最近退屈だなぁとフェンス越しに下を見下ろしながら一服。
俺の名前は最近では、結構有名らしい。別段喧嘩が大好きという訳では無いから、俺から喧嘩を売ることは無い。
勿論、売られたら全部買うけどな。
買い続けた結果が今なんだが。
「近嵐琥牙は危険だ」という噂が有るらしく、初めは生意気だとかいって喧嘩売ってくる奴が大勢居たが、そいつ等をぶっ倒していく内に誰も来なくなった。
バイトなんてして無い。
特に趣味もない。
熱を上げる彼女もいない。
よって退屈だ。
まぁ強いて言うなら
「女が欲しい………」
「…琥牙、女に興味あったんだ?」
失礼なこと言うやつだ。
「俺も男だからな」
「でも琥牙っていつもさ、好きな子できても告らずに終わるじゃん?
それに最近そんな素振り全然なかったし」
「っ!!! 何でお前知ってんだ!?」
こいつと色恋話はした事ないぞ!?
「ふっ 舐めんなよ。見てたらわかるって。琥牙分かりやすいし」
いや、分かりやすいなんて言われた事ないし親でさえ「あんた分かりにくすぎ」とか言うぞ?
無表情ではないのに俺は分かりにくいらしいぞ?
「普通、分からねえだろ」
「分かるよ。ずっと一緒に居るし」
「……てかお前彼女居たよな?中学のときその類の噂多かったぞ。今居ないのか?」