「ねぇ、初詣行こうよ。」

「今からか?」

私はニッコリと笑顔で蓮さんを見る。朝からでもいいかなって思っていたけど知り合いと鉢合わせする可能性もあるし、夜中だったら蓮さんと出歩いても多分大丈夫でしょう。

夜はまた一段と冷えるので、私と蓮さんはマフラーを巻いて外に出た。外は暗いから吐く白い息がより一層寒さを感じさせる。それでも蓮さんとのお出掛けに私はかなり浮かれていた。

神社には歩いていく。少し距離はあるけど、蓮さんと一緒だし何の苦にもならない。それに夜道は静まり返っているかと思いきや、意外とたくさんの人達が私達と同じ方向に歩いている。みんな初詣に行くのかな?

「結構人が歩いてるね。」

「あぁ。そのうち知り合いにでも会いそうな雰囲気だな。」

蓮さんの言葉に私はマフラーで顔を半分隠して、周りを警戒しながら蓮さんの隣を歩く。

「美織、怪しい人に見えるぞ。」

「だって…。」

蓮さんは笑いながら私の頭をポンっとする。真夜中の初詣に行く人がこんなに多いとは思わなかったな。

「蓮さんさ、実は社長御曹司でしたって言わないよね?」

「どうして?」

「やっぱりその存在感、只者じゃないのでは…なんちゃって。」

蓮さんは私の顔を見てクスッと笑う。

「俺はただの会社主任だよ。」

そうだよね。今更何を聞いてるんだろう。蓮さんはただの主任だって分かっているのに。でもやっぱりこの存在感は凄いなと改めて思う。

神社に到着すると、更にたくさんの人達が初詣に来ていた。うわぁ…これは絶対知ってる人がいるぞ。参拝しておみくじ引いてサッと帰ろう。

そう思った瞬間、私の携帯が鳴り始めた。