「美織は女子の噂に疎いから知らないだろうけど、今女子社員の間では蓮様の雰囲気が変わったって噂で持ちきりよ。」

「雰囲気が変わった?そうかな、全然気づかなかった。」

蓮さんはいつもと変わらないような気もするけど、私が気づいてないだけかな。

「二人で何の話してるの?」

私と裕香が話をしていると、私の後ろから高成さんが笑顔で話しかけてきた。

「こんにちは高成さん。ただの世間話ですよ。」

「そう…あっ俺、話の邪魔しちゃったかな?」

「あはは、そんなことないですよ。コーヒー飲みに来たんですか?」

高成さんは手にコーヒーを持っていた。

「うん。昼の休憩が終わったら、契約を取るため営業先でプレゼンをするんだけど…今から緊張しちゃってさ。コーヒーでも飲んで落ち着こうかと。でも赤崎さんに会えたからプレゼン頑張れるかも。」

高成さんは私を見てニッと笑う。その様子を見ていた裕香が高成さんに話しかける。

「高成さんって、まだ美織の事諦めてないんですか?」

「そりゃ、そう簡単に諦めきれないよ。赤崎さんの彼氏から奪略したいなぁ…なんて。」

笑顔で話す高成さんから私と裕香はパッと目を逸らした。高成さんが…とかじゃなくて、高成さんの後ろから物凄い殺気がしているのに気づいたからだ。

「…高成。お前は奪略出来るほどいい男なのか?」

高成さんの後ろから蓮さんが怒りに満ちた笑顔で声をかけてきた。その笑顔がめっちゃ怖い。

「あっ主任。嫌だなぁ、奪略したいくらい好きって事ですよ。」

高成さんは蓮さんの怒りには気づいてないみたい。