「美織、二ついいか。」

「何?」

「まず俺に別れると言った事、ひとまず撤回してくれるか?」

「…うん。」

「あと…逃げるな。杉村って奴と話をした後も逃げずに話をしてくれ。例え俺にとって都合の悪い結果になったとしても。」

「うん、分かった。ごめんね蓮さん。」

私が返事すると同時に、蓮さんの唇が私の唇に重なる。

「やっと美織に触れられる。」

そう言ってまた私にキスをする。優しく触れた唇は次第に吸い付くような激しさを増していく。

蓮さんとの時間はとても心地良い。私に安心感を与えてくれる。お互いの唇が離れた時、何だか寂しさを感じた。

「美織、ミントの味がする。」

唇が離れた後、蓮さんが私に言った。

「屋上に入る前にミント飴舐めたからかな。」

「ミント飴…。」

蓮さんはそう呟いて、少し考え事をしているような表情をした。どうしたんだろう。

「ミント飴がどうかした?あっもしかしてミントが苦手だったとか?」

「いや、違う。何でもない。そろそろ戻るか。」

蓮さんは立ち上がり、私に手を差し出した。その差し出された手を掴み、私もその場に立った。

杉村さんと話をして、早く自分の気持ちに決着をつけなきゃ。

蓮さんと話が終わった後、もう少し昼の休憩時間が残っているので自販機でミルクティーを買い、休憩スペースに行った。

「美織、用事は済んだの?」

休憩スペースには裕香がいた。一人で携帯を触りながら紅茶を飲んでいる。

「うん。裕香、平国主任に連絡してくれたんだって?おかげでちゃんと話できたよ。ありがとね。」

私は裕香の隣に座る。

「ちゃんと解決しそうなら良かったわ。それにしても、噂は本当だったのね。」

「噂?」

何のことだろう。気になって裕香に聞き返した。