「このままじゃいけないって分かってる。頭では分かってるけど…。」

私は空を見上げながら大きく溜め息をついた。

「美織は平国主任と杉村さんどっちが好きなの?」

「そんなの蓮…平国主任に決まってるじゃん。」

「じゃあ何で別れようって言ったの?謝ったら許してくれるかもよ。そもそも美織の意思関係なしに一方的にキスされたんだから。」

蓮さんは優しいから許してくれるかもしれない。でも…。

「許せないのよ、自分の事が。平国主任の事が好きなのに、まだ私の中に杉村さんが残ってる。だから私は杉村さんについて行ってしまったのかも。二人で会うのが嫌だったら逃げる事も裕香達に助けを求める事も出来た。でも私は杉村さんと二人で会ってしまったの。その結果キスされてしまった。もう…自分が分からないよ。」

私は膝を抱えて顔を埋めた。一体私はどうしたらいいの?

「美織さ、一度杉村さんと二人で会ってちゃんと話をした方がいいと思う。半年前に出来なかった話も今なら出来るでしょ?」

「でも今更…。」

「今だからよ。言い逃げしたせいで美織の気持ちもまだ止まったままなんじゃない?杉村さんとも平国主任ともちゃんと話をして、それから自分の気持ちを確かめたら?」

話…か。ちゃんと出来るかな。でも今のままでいい訳ないし、逃げるのはもうやめよう。

「…うん。話してみる。話聞いてくれてありがとね、裕香。」

「どういたしまして。いつでも話聞くから。」

その時、裕香の携帯がピロンと鳴った。彼氏からのメッセージかな。裕香は携帯を見て微笑んでいた。

「さて、そろそろ仕事の時間だわ。」

私達は立ち上がり、伸び〜っと手を上にあげ軽くストレッチをしてから庶務課へ移動した。