居酒屋に着くと、ビールと食べ物を手際よく注文して早速話を始めた。

「それで?杉村さんとは何があったの?」

裕香はビールを飲みながら私を見てくる。

「あー、うん…やり直さないかって言われた。」

「それだけ?」

「あと…キスされた。」

杉村さんとのキスを思い出してしまった私は、ビールをグィッと飲み忘れようとする。

「あらら。それで美織は何て言ったの?」

もっと驚くかと思ったけど、裕香はそんなに驚いてはなかった。

「その場できっぱり断った。でもまだ復縁を諦めてないような感じだったなぁ。相変わらず自分勝手な奴だわ。」

私はビールを飲み干して追加注文する。

「でも美織の今の姿見てたら、彼氏も変に思っちゃうよ。気をつけなきゃ。」

「…言ったの。彼氏に忘年会の帰りに元彼と会ってキスしましたって言った。なんか罪悪感が凄くて嘘つくのが苦しくて…全部話して別れようって言っちゃった。」

「…前から思ってたんだけど、美織の彼氏ってさ、ウチの会社の人じゃない?」

裕香の発言に私はビールを吹き出しそうになった。

「な、何でそう思ったの?」

「その動揺の仕方は…図星なんだ。だって美織、今彼の話全然しないじゃない?今までは何でも話してくれたのに、今彼については聞かないでオーラが出てるし…だから会社の人で、しかも恋愛しているのがバレたら不味い人なんじゃないの?」

うわぁ、名探偵裕香だ。私は何だか追い詰められた容疑者になったような気分になった。

「付き合っているのがバレたら不味い人って、例えば?」

「そうねぇ…社内不倫とか?あっまさかウチの課長じゃないでしょうね?」

「違う!そんなわけないじゃん。」

私は慌てて否定する。でも確かに普通の社内恋愛だったら裕香には言うだろうな。杉村さんの時も裕香には報告したし。そう思われても仕方ないか。