駅に着き、気持ちが沈んだまま電車を降りる。なんか足取りが重いな。周りの人達に抜かれながら私はゆっくりと歩いた。

「美織。」

駅を出ると、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。声がする方に顔を上げると優しい顔で微笑んでいる蓮さんがいた。

「…蓮さん、どうしてここに?」

「夜道を一人で歩くのは危ないだろ?それに…少しでも美織に会いたかったし。」

私を迎えに来てくれたんだ。嬉しい…けど蓮さんのその優しさで私の中の罪悪感が増す。

「ありがとう。」

そう言って蓮さんの胸に顔をぽふっと埋める。蓮さんは私の頭をポンとして、その後私達は指を絡ませながら家に向かって歩き始めた。

「…美織、何かあったのか?」

しばらく何も喋らず暗い夜道を黙々と歩いていたが、私の様子がいつもと違うのに気づいたのか蓮さんが話しかけてきた。

「何も…ないよ。」

胸の奥がチクっと痛む。蓮さんに嘘をついてしまった。

「そっか。」

蓮さんは私の方をしばらく見ていたけど、何も言わずに何となく重い空気のまま黙々と歩く。

あー嫌だ。私、何してるんだろう。

「…美織?」

蓮さんが急に立ち止まって驚いたような表情で私をじぃっと見ている。何だろう。顔に何かついてるとか?そういえば何だか顔が冷んやりする。私は自分の手で顔を触ってみた。

あれ?…涙が出てる?

私は慌てて指で涙を拭う。…蓮さんに嘘をつくのは嫌だよ。そう思った私はさっきの出来事を話した。

「ごめん蓮さん。私…忘年会の後、元彼と二人で会ったんだ。そして…そして彼とキス…した。」

「元彼って…どういう事だ?」

「ごめんなさい。もう…蓮さんと付き合えない。…別れよう。」

私の目からは涙が溢れ止まらないし、自分で何を言っているのかよく分からない。でも蓮さんの顔を見るのが怖くて、目も合わせず私はこの場から走って逃げた。

家に着いてからも何度も蓮さんから着信があったけど、私は電話には出なかった。