「それで勉強になりましたか?」

「そうだな…そこが問題なんだよな。」

主任はハァっとため息をつく。私には何が問題かは分からないが、自分には関係のない事なので深くは聞かなかった。

食事も終わり、私はいつも通り食べ終わった食器をキッチンへ運ぶと鼻唄まじりで機嫌良く洗い始めた。

「…赤崎、いつもありがとな。」

洗い物をしている私の後ろから突然ふわっと抱きしめてきて、耳元で囁くように声を出す。

私は何が起きたか分からないままその場にピシッと硬直してしまう。5秒くらいして意識が戻り何事かと思い振り返ると、至近距離に主任の顔があった。

「うわぁっ。」

びっくりしたのとドキッとした私は、洗いかけの皿をその場に落としてしまった。運良く皿は割れなかったが、落とした皿を拾うため慌ててしゃがんだ。

「大丈夫か?」

主任もしゃがみこみ、落とした皿を拾おうとする。そして2人同時に皿を拾おうとして手が()れた。

やばい。
何このドキドキシチュエーションは!?

私はパッと立ち上がり、顔を赤くさせながら主任を見る。すると主任もスッと立ち上がって私の手を握る。

「手、怪我してないか?」

「だ、だ、大丈夫ですから。…主任、どうしちゃったんですか!?」

動揺しながら主任に聞いた。だって明らかに変だし。