23時を過ぎた頃、私の携帯が鳴り始めた。蓮さんからの着信だ。私は慌てて電話に出る。

「もしもし、蓮さん。」

「もう家に着くから鍵開けててもらっていいか?」

「分かった。」

蓮さんが帰ってくる。そう思うと私はじっとしてられず、玄関を出てマンションの外に出た。

夜はまた一層寒さが増しているが、慌てて外に出てしまった私は上着を着るのを忘れていた。白い息をはぁっと吐きながら蓮さんの帰りを待った。

少ししてから一台のタクシーがマンションの前で止まり、中から蓮さんが出てきた。

「え、美織?」

蓮さんが私に気づき目の前に来る。そして上着も着ずに外にいた私に、自分のコートをかけてくれた。

「どうした?何で外に…。」

「お帰りなさい。」

私は蓮さんにぎゅっと抱きつく。

「美織…嬉しいけど、取り敢えず部屋に戻ろう。」

私達は手を繋いで蓮さんの部屋に戻る。そして暗い外から明るい室内に入ると蓮さんは私の変化に気づいた。

「えっ髪…切ったのか?」

「うん。変じゃないかな?」

私は髪を触りながら蓮さんの反応を見る。

「可愛いよ。」

蓮さんは私の髪を撫でるように触る。

「…女子力を上げようと思って、まずは外見から変えてみたの。次は料理の勉強しようかなぁ。」

「今でも可愛すぎるのに、それ以上女子力を磨かれたら…俺はどうしたらいいんだ?男子力を磨かないといけないじゃないか。」

蓮さんはなんか焦ったような言い方をする。そもそも男子力って何?

「男子力ってよく分からないけど、蓮さんにそれ以上磨かれると…私困るから。」

「俺も困る。可愛すぎて美織に惚れる男性が増えるじゃないか。」

「いや、私はモテるタイプではないし、その辺の心配は大丈夫だから。」

「ったく、無防備過ぎるから心配なんだ。美織はモテるタイプだよ。俺なんかには勿体ないくらい良い女なんだから。」

そう言って蓮さんは私を優しく抱きしめた。