出社してからも私は仕事に集中出来ず、ずっと蓮さんと社長令嬢のお見合いの事を考えていた。

彼女(わたし)がいなければ、お見合いの話も蓮さんにとって良い縁談だったのでは?

そんな事を考えながら、はぁっと深く長いため息をつく。そしてデスクに顔をつけ、私はモヤモヤする心と戦っていた。

「美織、どうしたの?辛気臭い顔して。」

私の様子を見ていた隣の席の裕香が声をかけてきた。

「何でもないよ。それより裕香、今日は一人で過ごすの?」

「まさか。クリスマスイヴに私が一人で過ごすはずないでしょ?ちゃんと一緒に過ごす人見つけました。」

裕香は長い髪を耳にかけてニコッとした。私は顔を上げてさらに裕香の相手について聞き出す。

「彼氏出来たんだ。相手はどんな人?」

「銀行マンよ。」

「へぇ素敵。」

私達は仕事そっちのけで小声で話す。

「美織の相手は?」

「…会社員。」

まさか私の彼氏は会社で噂の平国主任です…とは裕香にも言えない。

「私も裕香みたいに美人だったらなぁ。」

私は裕香を見ながら思わず思った事を口にしてしまった。

「美織が()を求めるなんて…今彼の事、本当に好きなのね。でも私だって綺麗になる努力してるのよ。美織も頑張れ。」

そう言って裕香は仕事を再開した。綺麗になる努力かぁ。そうだよね。蓮さんの隣にいても恥ずかしくないように女子力を上げなきゃ。

取り敢えず…今日仕事が終わったら美容室行ってみよう。