「今までの苦労が報われるくらい立派な結婚式ができますように、ってちゃんと祈っといた方がいいわよ?、宮子」

そこを離れてから紗江がわざと、あたしにじゃなく遊佐に向かって悪戯っぽく。

「・・・プレッシャーのかけ方が容赦ないね、紗江(オマエ)・・・」

「そお?」

ほほほ、とお(しと)やかに笑ってみせてから、あたしに腕を絡ませる紗江。

「あたしは、宮子と遊佐クンが最高に幸せになるようにって、お願いしといたからね!」

きっと神サマも紗江の迫力に押されて、2度頷いちゃったと思うよ?




社務所で家族分、厄除けのお守りだけ買い、神社を後にすると。その足で紗江を実家の近くまで送り届ける。

「今日は久しぶりに会えて言いたいことも言えたし、もう大満足。次は結婚式で会いたいから宜しくね、遊佐クン」

「はいよ。紗江の期待に添えるよーにガンバリマス」

「榊クンも、まあここまで来たら、その意地つらぬいちゃうのもアリかも。応援はしないけど頑張って?」

「・・・おう」

開けたままのドア越し、紗江は中の二人に晴れやかな顔でそんな風に声をかけた。
降りて車の外に立つあたしを最後にきゅっと抱き締め、優しく言う。

「これからは、嬉し泣きする宮子としか会いたくないからね。・・・でももし、またなんかあった時はすぐに相談してよ? いつでも飛んでくるから」

「ありがと、紗江。また4人で会おうね!」

「いいよ、もう。顔見るとつい遊佐クンいじめたくなるし」

屈託ない笑顔で手を振り、何度かこっちを振り返っては。後ろ姿が角を曲がって見えなくなる。