バイパスに乗ったり、30分も流した頃。石造りの立派な鳥居の下を、ぞろぞろと参拝客が(くぐ)ってくのが目に映り、近くにパーキングを探してようやく初詣に。

縦書きの達筆な梵字がしたためられたノボリが立ち、社殿までの参道は平坦だったから、榊が車椅子を押してゆっくり歩く。あたし達を追い越す家族連れの子供が、不思議そうに遊佐を覗いてくのも見慣れた光景。
松葉杖じゃなく、遊佐の車椅子姿を初めて見た紗江は一瞬、泣きそうな顔を堪え。「そんなに寒くなくてよかったわねー」と笑った。

大きなお賽銭箱が置かれた本殿の前は少し人だかりができてるくらいで、車椅子を見て場所を譲ってくれる。
5百円玉をそれぞれ投げ入れて、拍手(かしわで)を打ち。・・・願う。


家族みんなが今年も一年、健康で何事もなく過ごせますように。

一ツ橋のみんなが無事で、一年の終わりをまた一緒に迎えられますように。

大好きな人たちがみんな、シアワセでありますように。


どうかお願いします、遊佐を守ってください。

あたしはなにも要らないから。もう十分シアワセだから。

遊佐だけは。なにがあっても助けて。



この命と引き換えでいいから。願いを叶えてください、神様。