あの頃は言い寄られれば断らなかったのも、本人曰く。経験値上げたかっただけで、レンアイ感情は一切なかったとかナントカ。
自分から口説いたことは一度もないって自慢げだったっけ。オレが惚れてるのは宮子だけだ、って。そこだけはブレてないんだよね、ずっと。

「そんなの知ってるわよ、今さら聞かなくたって!」

助手席から飛んできた呆れ声に、遊佐がクスリ。

「なんだかんだ、紗江はオレのコトも分かってくれてるからスキ」

「褒めてもなにも出ないからねー」

「つれないねー、もっと優しくしてよ」

「アンタはそうやってすぐ調子に乗る」

わざとおどける遊佐と冷めた声の紗江のやり取りが、当時の再現VTRみたいで可笑しくて。
おじいちゃんおばあちゃんになってもあたし達は変わらないで、このままでいようよ。

笑いながら切なく願った。