それから国道沿いのファミレスに入り、高校時代を蘇らせながら積もる話に花を咲かせる。

「ほんとにね。宮子がお兄さんと結婚するって言い出した時は、ぜったい遊佐クンをブン殴るって思ってた!」

「ヤバい、命拾いした。紗江は怒らすとコワイから」

「いっそのこと式の最中に、榊クンに宮子を(さら)ってもらおうかって本気で思ったからね?」

「・・・ッッ」

向かい側で紗江の隣りに座る当人が、喉に詰まらせたのか思い切りむせた。

「ちょっと、大丈夫?!」

テーブル備え付けの紙ナフキンを数枚取って榊に手渡す。
グラスの水を流し込み、口許を拭って落ち着いてから低く。

「・・・悪い」

「紗江が言ったのは、たとえばの話だからね? 榊にそんなコトさせられるワケないし!」 

「アラ、榊クンならやってくれたわよねー?」

「・・・・・・・・・」

「ほらね?」

苦虫を噛みつぶしたような表情で榊が黙ってるのを、紗江は人の悪そうな笑顔で。

「もし遊佐クンが間違いなくお兄さんに宮子を譲ってたらって話よ。こんど宮子を泣かせたら、問答無用で榊クンと駆け落ちさせるから。憶えといてね遊佐クン?」

「肝に銘じてるって。昔っから宮子のコトってなると容赦ないもんなー、紗江」

「あれだけ女グセが悪かったら当然でしょー。ホストにまでなってみたりとか、遊佐クンにはほんと笑わせてもらったわー」

ゼンゼン笑ってないよ~、その目!
思わず吹き出せば。

「宮子は甘やかしすぎ!」

叱られちゃったよ、おねえさんに。