あたしは答えなかった。答えられなかった。気が付いたら指が勝手に通話を切ってた。握ってる掌の上で、すぐにスマホが音のないバイブレーションで震えだす。
『真』のひと文字があっという間に滲んで見えなくなった。あたしを呼び出し続ける画面に、ぽたぽたと切れ間なく涙が落ちてく。

真が剥き出しの本音をあたしに叩き付けた。
本気であたしを止めた。
あんな風に言わせるつもりじゃなかった・・・っっ。

どうでもいいなんて。
代わりになれるんなら。この脚を切り落としてあんたにあげたのに。それでも足りなかったら目だって腕だってあげるのに。

いつだってあんたより大事なものなんてこの世にないのに。真の気持ちを踏みにじってまで高津さんのところに行くの? ただの自己満足なんじゃないの・・・?!

赤、青、黄色、信号が頭ん中でランダムに点滅を激しくする。理屈じゃなく肌で感じたんだよ、きっとなにかの意味に繋がるはずだって。何もしなかったのをあとで後悔したくないって・・・っ。


だから行かせて。


胸が千切れる思いで嗚咽を殺した。

「・・・ッ、ごめ・・・っ、まこ、と・・・ッッ」

手の甲で濡れた頬を何度も拭うと鼻を思い切りすすり上げ、ずっと着信し続けてるスマホの応答部分に指を触れた。

『ッ、宮・・・!!』

切羽詰まった声で真がなにか言いかけたのを。

「お願い、あたしを信じてて・・・っっ!」

涙交じりの声で振り切った。そして。
覚悟して電源ごと・・・GPSを切断した。