この人はお使いを頼まれたって言った。でも多分、高津さんのために何かしたくてここにきた。・・・温かみのある情が言葉に滲んで聞こえた。

相澤さんを憎んでなにかを操ろうとするのも高津さんなら。由里子さんが弟のように思ってる彼も同じ。北原さんが知る高津さんはどんな人・・・? 亞莉栖で会った夜の高津さんの顔が瞼の裏に霞んだ。

「・・・あたしが断ったらどうしますか」

目が合った彼はほんとに困ったように笑い、長い指で髪をくしゃりと掻き上げる。

「女の子に無理強いなんてオトコの風上にもおけないし、分かってもらえるまで一生懸命オネガイする」

「北原さんは」

「千也でいいよ」

「・・・千也さんは、あたしが誰の娘か知ってますよね」

「うん、晶さんから聞いてる。でもミヤコちゃんはカナくらいイイ子だね。ホストしてて人を見る目だけは自慢だから、オレ」

茶化してるワケでもなく、素直に答える彼。
あたしは表情を崩さずに言い重ねた。

「あたしになにかあれば、ただじゃ済まないのは高津さんが一番よく知ってるハズです。千也さんだって見逃してもらえなくなる。・・・それも覚悟で言ってるんですか?」