「うん。実は晶さん、日本を離れることになって、その前にミヤコちゃんと会って話がしたいみたいでねぇ。・・・どうかなぁ? 会ってやってくれない?」

歳は高津さんと同じくらいか、上っぽい。どこまで事情を知ってるのか何も知らないのか。小首を傾げ、彼がふんわり笑った。

高津さんが海外に? 真も仁兄もそういう話はしないからもちろん初耳だった。
襲撃の件は本人は否定したらしいけど、クロに近いグレーの線は消えてないって。前にユキちゃんが教えてくれた。しばらく他所に出してほとぼりを冷まさせる、シノブさんの思惑かもしれない。

どっちにしても答えは決まってる。口を開くときっぱり答えた。

「高津さんに宜しく伝えてください。あたしには会って話すことはありませんから」

北原さんは一瞬じっとあたしを見つめると、そっかぁ、と残念そうに肩で溜息を吐く。体を斜めに脚を組み替え、イスの肘掛けに頬杖をついたリラックスモードで。

「晶さんも言ってたからなぁ、ミヤコちゃんに嫌われてるって。でもこれでぜんぶ最後(おわり)にするから、・・・って伝言。そしたらもう日本には戻ってこないつもりらしいよ?」

天井を仰ぐように投げかけた眼差しを戻し、眉を下げて微笑した。

「あのひと、嘘は言わないから」