パーティションで仕切られた個室は入り口脇にあって、通りに面したガラス張り。ブラインドで外からの視線はあまり気になんないけど、声を張れば近くの席の社員には筒抜けだ。

テーブルを挟んで向かい合った彼は。北原(きたはら)千也(せんや)と名乗った。

「本業はメテオの雇われマスターだけど、晶さんには昔からお世話になっててネ。今日はミヤコちゃんにお使いを頼まれてきた。・・・ゴメンネ、お仕事中に」

どんな胡散くさい()が来たんだろうって構えに構えて、扉を開く寸前は血圧まで上がりそうだったのに。人懐こそうな笑顔と、最初からやんわり砕けてた話し方はすごく自然体で、拍子抜けしそうなくらい裏があるように見えなかった。

夜の仕事な割りには、三つ揃いのスーツ姿が板についてる。相澤さんと同じくらいの長身で、相澤さんにも劣らない抜群の容姿。ウエーブがかった少し長めのブラウンの髪は品良くスタイリングされ、でもやっぱりサラリーマンとはちょっと空気が違う人。

甘さと男っぽさを絶妙にブレンドしたかなりの美形で、取り次いでくれた女の子がやたらソワソワしてたのも合点がいく。もし外で声をかけられたら、断る女子はいないだろうし、まずこっちの油断を誘うためのお使い役・・・とか。厳重警戒の赤色灯がグルグル回る。

「・・・・・・それでご用件はなんですか」

余裕ぶってにっこり笑うなんてムリ。表情も声も強張ってる自信はある。それでも。目だけは逸らさずに、真っ直ぐ見据えて言った。