・・・は?!
素っ頓狂な声を上げそうになったのを塞いで堪えた。何をどうひっくり返したって、誰かがあたしを訪ねてくるなんて!

思いきり眉を顰め、それでも口調だけは平静を装った。

「・・・すみません、お客さまの名前は?」

『北原様とおっしゃる方で、高津様のご紹介だと言えば分かるからと・・・』

「・・・!!」

驚きすぎて声も出なかった。

高津さん・・・?
なんで。
うそでしょ。

心臓がさっきから変な音を立ててる。脇に嫌な汗もかいてるし、頭ん中は混乱しまくってる。
北原なんて知らない。なんの罠?、それとも彼が寄越したメッセンジャー? だとしたってこんな、仁兄の留守を狙うような真似・・・!

思考回路を最大速度で回しながら受話器を固く握りしめ、お腹の底にぐっと力を入れ直した。



「・・・・・・商談室に通してもらえますか。すぐ行きます」