自宅へ戻り、渉はベッドに横になった。
天井を見ながら思い出す。

多香子に受精卵を移植したのは渉だ。
経過観察をしていたのも渉だ。
そして、多香子が流産した時に処置をしたのも。

渉は自分の手を見つめる。

大好きな彼女から笑顔を奪ったのは自分のこの手かもしれないと渉はずっと思っていた。

多香子がロボットといわれるたびに自分の手をポケットの中で握りしめていた。

この手で、彼女を守れなかった。
彼女の希望を守れなかった。

何よりも守りたい命を守ってやれなかったのはこの俺だ。