『卒業生が退場します』



全員が出口に向かい、回れ右をする。


退場したら、リハーサルも終わり。

そのまま各教室へ戻ることになっている。

残るは明日の本番のみだ。



「う、わぁ……っ!?」



ひんやりとした体育館を出たところで、突然腕をつかまれ体育館近くのトイレに引きずりこまれた。


驚いてドキドキしながら相手を見れば、そこには受験疲れなんてまったく見当たらない美貌の才女、木内さんがいた。



「な……なんですか、いきなり」

「篤に聞いたんだけど」



開口一番、平くんの名前を出す彼女。

紅い唇が少し、こわいと思った。