「文乃ちゃーんみたらし団子2つ頂だい。」
「はーい、ただいま!」
今日も家の手伝いで店の中を行ったり来たり。私は街にある小さな茶屋の娘で、毎日家の手伝いでこうして店の中を行ったり来たりしている。
「お待たせしました。みたらし団子2つです。」
「ありがとうね文乃ちゃん」
「いえいえ、どうぞごゆっくり」
それにしても今日も沢山お客さん来るなぁ。有難いんだけど大変だなぁ…
お盆を持ったまま壁に寄りかかっていると母親に声をかけられた。
「文乃、今日はもう休憩していいよ」
「え!?本当に!?」
「えぇ、どこか出掛けてらっしゃい」
「やったぁ!」
いってきまーす!と言って走って店を出た。


長い石段を登るとそこには古びた神社がある。
ここは私のお気に入りの場所でよく行くのだ。
鶯神社。この神社は恋愛成就?の神社らしい。
「恋愛成就ねぇ…」
べつに好きな人とか居ないんだよなぁ…
いつか私にもそんな人現れるのかな。そんな事を考えていると境内の下に何か白い物体がもぞもぞと動いている。気になって覗いて見ると白い兎が飛び出してきた。
「ぎゃあ!?」
驚いて尻もちをついてしまった。
「ねぇ、君」
「!?」
突然後ろから声が聞こえ振り返るとそこには白髪の紅い瞳の青年が不思議そうな顔をして立っていた。
「どうしてそんな所で座っているの?」
「え、あっ、えっと、そこから兎が飛び出してきて驚いちゃって…」
「ふーん」
青年はすっと手を差し出し立たせてくれた。
「あ、ありがとうございます…」
「いーえ、それよりさそのうさぎってどんなの?」
「えーと、白い兎だったような…」
「そっか」
「あの、それがどうかしたんですか?」
「ううん、別に」
それよりさと青年は話を変える。
「君名前なんて言うの?」
「和宮文乃です。鶯通りの茶屋の娘です」
「へー、今度行ってみようかな」
「はい、ぜひ!」
「あ、僕の名前は弥生」
「弥生くんですね。この辺に住んでいるんですか?」
そう聞くと弥生は少し微妙な感じの顔をする。
「んー、まぁそんな感じ」
「?」
「あ、ぼ、僕もう帰らないとだからまたね」
「はい、また会えますか?」
「もちろん」
そう言い急いでどこかへ行ってしまった。
「また、明日会えるよね…」
そう呟き瞳を閉じて深呼吸をする。

何だか素敵なことがありそうな予感がする______