「でも最近分かったんです。別に特別なことなんてなかった。杏ちゃんは、誰にでも優しくて、誰にでも笑顔を向けてくれる。
泉が杏ちゃんと出会って変わったのは、泉が変わろうと思ったから。別に杏ちゃんが変えたわけではない。
ただ泉が…杏ちゃんの優しさを受け止めて、それ以上に杏ちゃんに返したいと思ったから。

俺は…その優しさを自分に向けて欲しいと思ってしまったけど…」


そう

本当は初めから杏ちゃんは、俺にも同じように優しくしてくれてた。笑ってくれてた

ただ俺が、勝手に見返りを求めていただけだ


好きだと言ったら、好きと応えて欲しい
抱きしめたら、抱きしめ返して欲しい


俺は欲ばかりだ



自分の気持ちが分からなくなってる




「……とても、貴方の気持ちが分かります」




中途半端な気持ちで。と怒られるかと思ったのに、志木さんの反応は違った



「私は、杏様に見返りしか求めていませんでした。執事としてあるまじき感情ですが。私はとても…欲深いんですよ」


運転しながらニヤっと笑った